郡上八幡音楽祭へ向かう車内からの景色はひたすらワイルド

郡上八幡音楽祭2017 西アフリカ・マリの民族音楽 – 現場リポート#1

alphanote原田卓馬の肖像

はじめましてalphanoteの音楽ジャンキー担当・原田卓馬です。音楽に関連する情報を随時アップしていこう思いまして、不定期で『現場リポート』を公開していきます! 初めに断っておきますが、ライブ演奏の素晴らしさを文字と写真で伝えるのって絶対無理です。できるだけ情報は正確に、主観は正直に伝えるよう努めます。

一度も触ったことのないアフリカの楽器のことを書くのは苦戦しました。勉強不足で恐縮ですが、説明に不備や間違いがあればコメント等でご指摘いただけるとありがたいです。

今の所alphanoteは「音楽配信」が主軸ですが、世界中の音楽ファンに未知の音楽体験をして頂きたいという思いを込めてしたためます。

アフリカの音楽って聴いたことありますか?

アフリカの音楽といえば、どんな音を思い浮かべますか?

「アフリカといえばTOTO!」というあなた、それはアメリカのロックバンドです!おっさんなのがばれます!
「アフリカといえばライオンキング!」というあなた、ディズニー映画はアメリカだし、主題歌を作曲したエルトンジョンはイギリス人です!全然違います!

ジャズ・ソウル・R&B・ヒップホップなど黒人音楽(ブラックミュージック)の愛好家は日本中にたくさんいますが、そのほとんどはアメリカ音楽です。私は実際にアフリカ人ミュージシャンの名前なんて一人も知らないことに気づいてびっくりしました!

アフリカの楽器といえば〜

・両足に挟んで叩く太鼓のジャンベ
・数年前に日本でも流行したプラスチック製の打楽器パチカの元になったアサラト
・”親指ピアノ”として有名なカリンバ(ムビラ)

など人気の楽器はたくさんありますが、アフリカ楽器の多様性はこんなもんじゃないんです。

 

「West African Grooveマリの歌と弦楽の響演」

マリ共和国の演奏家と日本人ホストミュージシャンの土取利行さんらによるライブが行われるということで、台風18号の接近が予報される中、岐阜県郡上市で開催の『郡上八幡音楽祭2017』に行ってきました!

念のため、マリ共和国は西アフリカの内陸部に位置する国です。でん!

世界地図におけるマリ共和国の位置

赤く塗ってあるところがマリ共和国です。はい、めっちゃ遠いです。

マリ共和国の国旗。左から緑・黄・赤のトリコロールカラー。

これがマリ共和国の国旗です。汎アフリカ色のトリコロールです。

脱線しましたので話を戻します。

新宿から高速バスに揺られること6時間。中津川インターへ。出迎えに来てくれた友人の車に運ばれること1時間30分。強風が吹き荒れる中、ひたすら続く山道を駆け抜けて、岐阜県のちょうど真ん中あたりに位置する郡上市に到着しました。

愛宕公園の野外舞台での開催予定でしたが台風接近の予報を受け、お隣の郡上総合文化センターの音楽ホール内での演奏に変更となりました。18:00過ぎに到着するとすでに演奏は始まっていました!

郡上八幡音楽祭の会場となった郡上総合文化センター

今年は「West African Grooveマリの歌と弦楽の響演」ということでマリ共和国の演奏家と日本人ホストミュージシャンの土取利行さんらによるライブが行われました。来日キャンセルとなってしまったカマレンゴニ奏者のボア・ジャキテさんに変わって土取さんが急遽演奏することになりました。

 

郡上八幡音楽祭2017 – マリの歌と弦楽の響演

会場は撮影禁止だったので、Twitterの引用になってしまいますがごめんなさい!是非フォローしてみてくださいね!

メンバーは左から

ヨロ・シセ – ンジュルケル(二弦の弦楽器)
アサバ・ドラメ – ンゴニ(四弦の弦楽器)/タマ(トーキングドラム)
ハンマ・サンカレ – ヴォーカル/カラバス(ヒョウタンの打楽器)
松田美緒 – ヴォーカル
土取利行 – ジャンベ/カマレンゴニ(ヒョウタンのハープ)

約600席のホールは7割くらい埋まっていて、お年寄りの方から、子供連れの若い夫婦、ちょっとヒッピーっぽい雰囲気の若者(笑)と、老若男女様々な客層でありました。舞台のいたるところに火を灯したキャンドルが配置され、幻想的な雰囲気です。ステージの背後に吊るされた舞台芸術担当のアブドゥー・ウォログァム氏の泥染によるバックフラッグが光を浴びて神秘的に浮かび上がります。

 

マリの音楽家 – 身体性の高さに驚愕

演奏が始まるとハンマ・サンカレ氏によるカラバスのリズムが全体を支配している印象でした。

カラバスは大きなヒョウタンを半分に切っただけの打楽器です。手のひらの底でヒョウタンの胴体を叩くことでドンドン、バンというどっしりした低音を鳴らすことができ、指先でつまんだ箸をヒョウタンの表面に充ててカチカチとしたキレのいい高音をあやつることができます。

マイクの使い方の問題もあるとは思いますが、かなりしっかりしたアタック感とファットさのあるドスの効いた低音が鳴っていました。ロックバンドでバスドラム/キックの代用として使っても問題ないくらいパワフルな低音と、箸で叩く高音だけで凄まじい緊張感のあるビートが。ただのヒョウタンを切っただけのシンプルな楽器だからこそ、卓抜な身体所作が存分に発揮されます。

西アフリカには古くからグリオーという世襲制の職業があって、歴史や文化を口伝継承していく歌が先祖代々歌い継がれているんですね。何語で歌ってるのかはわかりませんでした(マリの公用語はフランス語)が、しなやかで伸びのある声と複雑なリズム感。お経のような呪文のようなフレーズは独特でした。

アサバ・ドラメ氏によってンゴニ(4弦ギター)で何度も繰り返し奏でられる呪術的なリフは、スペインのフラメンコや青森津軽のじょんがら節にも似たスリリンングさのあるスケール感。指先で弦を弾く三連符のペケレッ!ペケレッ!というフレーズは切れ味が抜群で、ものすごいスピード感でした。スイングしながらも、複雑な変拍子が当たり前のように登場する感じは大好物です。ンゴニが元となってアメリカ楽器のバンジョーが誕生したと云われているようです。

ンゴニからトーキングドラムに持ち替えてもまた凄まじい!とにかく速い!

トーキングドラムは細長い筒状の両面の太鼓を脇に抱えて、皮の張力を変えることで音程が変わるっていう西アフリカの伝統的な太鼓です。かつては遠くの人と音で会話するための通信手段として用いられたともいいます。

連打しながら皮の張力をコントロールすることで、駆け上がるような音、急落下するような音がぐにゃぐにゃと変幻自在に繰り出されるのは圧巻でした。

もうこれって本当に人類普遍の人力トランスなんですよね。

集中力の海に溶けていくというか、音の脈動に乗っかって変成意識状態に突入していくというか、ダンスミュージックの本質そのものって感じです。

ヨロ・シセ氏は演奏しながらトランス状態になる能力のあるシャーマンで、ぶっとんんだまま何時間もンジュルケル(2弦のギター)を演奏するそうです。

土取利行氏は来日できなかったボア・ジャキテ氏に代わってカマレンゴニを担当。十本の弦を親指で弾いて音を鳴らすハープで、歌い手に最適な優れた伴奏楽器。途中ジャンベに持ち替えたり、メモ紙を読みながら歌ったりなんでもやります。途中、演奏のやりとりが予定通りに行かない様子も垣間見えましたが、そこはミュージシャンの腕の見せ所、トラブルを臨機応変に即興で乗り切る瞬間はライブの醍醐味です。

ホールにはスピーカーが設置されており、各楽器のサウンドをマイクで拾っていたので、楽器そのものの生鳴りが体験できないのはちょっと残念でした。普段から自然の空間で鳴っている音楽だもんで、折角だから生音で体感したいものです。

 

郡上八幡音楽祭2017の物販コーナー。アブドゥー・ウォログァム氏による泥染のTシャツと亀のクッション

終演後、ロビーに出て来ると手作りのチキンと豆のカレーが甘くて刺激的な香りを漂わせて大盛況。物販コーナーでは舞台芸術担当のアブドゥー・ウォログァム氏による一点ものの泥染Tシャツや守り神の亀のクッションが売られていました。泥染はマリのドゴン族に伝わる伝統的な工芸品だそうです。

 

郡上八幡音楽祭とは

郡上八幡音楽祭2017
https://gujomusicfes.wixsite.com/gujomusicfes2017

2017年9月17日(日)
会場:郡上市総合文化センター
岐阜県郡上市八幡町島谷207-1
前売り5500円 / 当日6000円
主催:郡上八幡音楽祭実行委員会

郡上八幡音楽祭は、「土地と人間の関係を音楽でとらえなおすこと」を理念に、自然と折り合うことで絶妙な暮らしをつむいできた郡上八幡の城下町で2013年より開催されてきました。郡上市民を中心とした「郡上八幡音楽祭実行委員会」を主催として、郡上八幡を拠点に活動するパーカッショニスト・土取利行をホストに、世界各地からその土地ならではの音楽家を招聘しています。とはいえ音楽、ただのその音楽がいったい何をもたらすというのでしょう。(ホームページでの主催者挨拶より抜粋/郡上八幡音楽祭実行委員会代表 井上博斗さん)

過去のフライヤに目を通すとどの演目も非常に興味深い内容です。ワールドミュージック・ファンなら垂涎ものの多様性の富んだラインナップです。

 

2016 トルコ・スーフィー 葦笛のうたと神秘の楽奏

2015 超フリージャズコンサートツアー

 

2013 日韓パーカッションアンサンブル 土取利行&ノルムマチ

 

 

土取利行とは何者なのか?

ここまでご覧になって、郡上八幡音楽祭で毎年ホストミュージシャンを務める土取利行とは一体何者なのか、興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

私が土取利行さんを最初に知ったのは、BOOK OFFでイージーリスニングの棚の中から見つけたサヌカイトのCDをジャケ買いしたことがきっかけでした。サヌカイト=讃岐石は香川県で産出される自然石で、叩くとカーンと透明感のある響きがすることから古くから楽器として用いられていたそうです。

動画のようにマリンバや鉄琴のように並べて演奏されることもあります。とにかく音が気持ちいいので、部屋の雰囲気をチューニングするような感覚で、作業する時とか寝る時とかずっと聴いてた時期があります。自然界にあるままの石を叩くだけで奏でられるサウンドって凄いなーと興奮したものです。

調べてみたら元々フリージャズのドラマーで、縄文鼓・銅鐸・バラフォン・サヌカイト・カマレンゴニ・ドラム・パーカッション・三味線・笛と楽器全般に加え、演歌まで。世界的にミュージシャンのネットワークを持っている、とんでもない音楽家だったんですね。大発見でした。

土取利行(ツチトリ トシユキ)
70年代よりフリージャズドラマーとして近藤等則、坂本龍一などと活躍。75年から渡米渡欧しミルフォード・グレイブス、デレク・ベイリー、スティーヴ・レイシーなど即興演奏のパイオニアとコンサート、レコーディング。76年ピーター・ブルック国際劇団に音楽監督・演奏家として参加し、今日まで『マハーバーラタ』『テンペスト』『ハムレット』など多くの作品を手がける。アフリカ・アジアに民族音楽、芸能の調査に出かけ、多くの民族楽器や舞踊を学ぶ。87年、故桃山晴衣と岐阜郡上八幡に芸能堂立光学舎を設立し、数々のプロデュース公演を企画し出演。また「銅鐸」「サヌカイト」「縄文鼓」など日本の古代音楽の研究・演奏を手がけ、さらに人類の音楽の起源を探求すべくフランスの壁画洞窟を調査し、演奏。桃山晴衣の逝去後、彼女が最後の弟子として添田知道から直接習っていた本流演歌の研究・演奏に従事、添田唖蝉坊・知道の作品をCDで発表。著書に『縄文の音』『螺旋の腕』『壁画洞窟の音』『音の神秘』(訳本)。『軟骨的抵抗者・演歌の祖・添田唖蝉坊を語る』(鎌田慧共著)。CD多数、2017年エヴァン・パーカー、ウィリアム・パーカーとのライヴコンサートをCD化。2017年からブルック劇団で『バトルフィールド』世界巡業中。

是非チェックしてみてください!

来年の郡上八幡音楽祭ではどんな音楽が響き渡るのか、楽しみですね!

現場からは以上です!

取材・文 / alphanote 原田卓馬