日本からいちばん遠い国々の音楽 〜クンビアを巡るめくるめく冒険〜

by Hitoshi Kurimoto(2017.10.31)

ラテン・アメリカのちょっぴり変わった音楽を紹介していくコラムの第3回目。
今回は、クンビアというジャンルに注目してみましょう。

 

クンビア?それ何?という方も多いと思いますので、簡単に説明しておきましょう。
クンビアは、南米コロンビア発祥の伝統音楽の一種です。
というと、マニアックに思われるかもしれないですが、ここ10年くらいの間にクラブ・シーンでダンス・ミュージックとして話題になり、ロックやポップスのジャンルにも影響を与えていきました。
例えば、パンク・バンドの最高峰、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーはDJの際にクンビアを頻繁にプレイしていましたし、シャキーラなどのラテン系シンガーもクンビアを取り入れた楽曲を多数ヒットさせています。

 

このクンビアのユニークなところは、ローカルな音楽だったのに、中南米一帯に広がっていったということです。
例えば、サンバは基本的にブラジル特有のものですし、タンゴも世界中に愛好家がいるとはいえ、基本的にはアルゼンチンやウルグアイといった一部の地域にしか根付いていません。
しかし、クンビアは様々な国で地元の音楽として受け入れられていったのです。

 

クンビアのルーツを辿ると、アフリカに遡ります。
中南米の音楽の大半はそうなのですが、アフリカから奴隷として連れてこられた黒人たちのリズムと、ラテン・アメリカの先住民の文化が入り混じってできた音楽です。
おそらくクンビアは2拍子のシンプルなリズムが親しみやすかったこともあって、各国に受け入れられていったのでしょう。

 

では、本来のクンビアとはどういうものなのか、まずは聴いてみましょう。


Gaiteros De San Jacinto

「Viene Amaneciendo」

 

これはコロンビアの伝統的なスタイルのクンビアです。
様々な太鼓が使われていますが、マラカスの「ズッチャッ、ズッチャッ」という2拍子のリズムがベースとなっています。
これを聴く限りでは、アフリカ起源といわれて納得しますが、逆にクラブ・シーンで受け入れられるリズムとは程遠いと感じるでしょう。
ただ、コロンビアではこのリズムが少しずつポップスに伝播していき、クンビアが大衆音楽となっていくのです。


Alberto Barros

「La Pollera Colorada」

 

コロンビアはサルサも盛んなのですが、そのサルサのバンド・アンサンブルでクンビアを演奏するとこんな感じになります。
この変わり方を聴けば、少しはクンビアが受け入れられていったことがわかるのではないでしょうか。
これくらいなら、少しローカル色を取り入れたラテン・ポップというくらいのイメージでしょう。しかし、クンビアの進化はこんなものではなかったのです。


Deleites Andinos

「Por Tu Amor Estoy Muriendo」

 

クンビアは、なぜか国境を超えてエクアドルを通過し、ペルーに渡ります。
そして、チーチャという大衆音楽へと生まれ変わるのです。このチーチャというジャンルは、なんというか元のクンビアの面影もない下世話な大衆音楽なんですよ。
なぜか田舎生活を売りにしていたり、やけに色っぽい衣装で女性が歌っていたりと、やりたい放題。なぜあの素朴なクンビアが、こうなってしまったのか不思議でなりません。まあ、素朴といえば素朴ではあるのですが。


Yerba Brava

「La Cumbia de los Trapos」

 

そして、ペルーのチーチャとは別に、アルゼンチンに渡ったクンビアは、クンビア・ビジェーラというジャンルに変化していきます。
クンビア・ビジェーラは、いわゆる地方のゲットー・ミュージックで、歌詞の内容も政治、貧困、暴力、性などかなり過激で社会派です。
よって、一般流通している音源も少なく、大抵はCD-Rなどの海賊盤を通して広まっていきました。
このジェルバ・ブラバはその中でもメジャーになって人気になったグループのひとつ。
ポップスとして完成されていますが、どこかチープなサウンドはクンビア・ビジェーラの特徴でもあります。


La Yegros

「Trocitos de Madera」

 

クンビア・ビジェーラはメインストリームではなく、アルゼンチンの田舎のゲットーにおけるアンダーグラウンドなものだったのですが、そこに目をつけたのがブエノスアイレスのクラブDJたちでした。
とりわけ、10年ほど前からZizekというクラブを拠点にイベント展開していたZZKというレーベルが、続々と斬新なスタイルのクンビアを提案していきました。
チャンチャ・ビア・シルクイート、エル・レモロン、ファウナといったユニークなクリエイターを輩出していきますが、このラ・ジェグロスという名の女性シンガーもそのひとり。
彼らはデジタル・クンビアと呼ばれ、世界中のDJからも注目を集めることになるのです。


Kumbia Queers

「Tanto me quería」

 

さて、ここからは少し駆け足で紹介しましょう。
クンビアはクラブ・シーンだけでなく、ロックにも大きな影響を与えたことは先述の通り。
メキシコ人とアルゼンチン人で構成されたガールズ・パンク・バンド、クンビア・クイアーズはその代表的な存在です。たしかにパンクとクンビアのリズムは合いますね。


Bomba Estereo

「Fuego」

 

世界中を駆け巡るクンビアですが、コロンビアに舞い戻り最新サウンドに変身させたのが、ボンバ・エステレーオです。
彼らはアルゼンチンのデジタル・クンビアをさらに発展させ、ヒップホップ、エレクトロニカ、レゲエ、ダブといった様々な要素を組合わせ、クールなクンビアを作り出しました。
オリジナルのクンビアからは、かなり長い道のりを辿ってここに行き着いたのです。


A.B. Quintanilla III Y Los Kumbia Kings

「Mi Gente」

 

最後におまけではありますが、米国のクンビアも紹介してきましょう。
北米にはラテン・コミュニティがたくさんあり、ラテン・ミュージックも活性化していますが、クンビアもメジャーな音楽として君臨しています。
ここでは、ヒップホップ・カルチャーと合体し、クンビアを不良の音楽として根付かせたA.B.キンタニージャ3世とロス・クンビア・キングスのコラボ曲でお楽しみください。


というわけで、クンビアといっても多様なスタイルがあることをお分かりいただけたでしょうか。
ここまで進化や変化を繰り返していったラテン音楽はあまりないかもしれません。
ぜひ機会があれば、さらにディープなクンビアの世界を覗いてもらえればと思います。